ダーツの投げ方は千差万別で、プロの選手を見ても一人ひとり個性があります。
自分に合った投げ方を見つけるのが上達への一番の近道ですが、まずは基本を知ることが大切です。この記事が、投げ方に迷った時や初心者に教える時の助けになれば幸いです。
立ち方 (スタンス)
ダーツのフォームにおいて、体の一番の土台となるのが「スタンス」です。
スタンスが安定しないと、その後の腕の振りもすべて不安定になってしまいます。まずは自分に合った立ち方を見つけましょう。
オープンスタンス
スローラインに対して体を真正面に向ける、最もシンプルな立ち方です。
体の向きがボードに対してまっすぐなので、窮屈さがなく自然体で立てるのがメリットです。
ただし、ターゲット・ダーツ・目を一直線上に配置するのが難しく、腕を体の横から振るような形になるため、正確に狙うのが難しいという大きなデメリットがあります。
体の柔軟性に自信がない方や、リラックスして投げたい方には向いていますが、競技者でこのスタンスを採用している人は非常に少ないです。
クローズドスタンス
スローラインに沿って体の側面をボードに向ける、真横を向く立ち方です。
肩、腕、ダーツ、ターゲットを一直線上に配置しやすいのが最大のメリットです。
また、体を横に向けることで、3つのスタンスの中で最もボードとの物理的な距離が近くなります。
一方で、体の側面を向いているためバランスが取りにくく、特に上半身が前後にブレやすいというデメリットがあります。骨格によっては窮屈に感じるかもしれません。
ミドルスタンス
オープンスタンスとクローズドスタンスの中間、ボードに対して斜め45度前後の角度で立つ、最も一般的なスタンスです。
利き腕側の足を前に出し、つま先をボードの中心か、やや内側に向けます。
狙いやすさと安定感のバランスが非常に良く、多くのプレイヤーがこのスタンスを採用しています。
筆者もこのミドルスタンスで、初心者の方はまずここから試してみるのがおすすめです。
唯一のデメリットは、斜めに立つため、毎回まったく同じ角度と位置で立つのが難しい点です。足元に目印をつけたり、つま先の向きを常に意識したりする工夫が必要です。
スタンスの基本
基本的に、右利きなら右足、左利きなら左足と、投げる腕と同じ側の足を前に出します。これを軸足として、体重を少し前にかけると安定しやすくなります。
持ち方 (グリップ)
グリップは、ダーツと体を繋ぐ唯一の接点であり、ダーツに力を正確に伝えるための非常に重要な要素です。
指の本数によって特徴が大きく異なります。
- ツーフィンガー(2本):親指と人差し指で挟むように持つ。
- スリーフィンガー(3本):親指と人差し指で持ち、中指をダーツの下に添える。
- フォーフィンガー(4本):3本指の形に、さらに薬指を添える。
ツーフィンガー(2本グリップ)
親指と人差し指の2本だけでダーツを支える、最もシンプルなグリップです。
リリース時に他の指が邪魔をしないため、ダーツが指からきれいに離れやすい(抜けが良い)のが最大のメリットです。
しかし、支える指が少ないためダーツを安定させるのが難しく、かなりの習熟が必要となります。筆者はこのグリップですが、安定するまでには時間がかかりました。
スリーフィンガー(3本グリップ)
親指と人差し指でダーツをつまみ、中指を先端(ティップ)部分に添えて支える、最もオーソドックスなグリップです。
ダーツの安定感とリリースのしやすさのバランスが取れており、多くのトッププロも採用しています。
初心者の方が最初に試すグリップとして最もおすすめです。まずはこのグリップでダーツをしっかり支える感覚を養いましょう。
フォーフィンガー(4本グリップ)
3本グリップにさらに薬指を添えて、合計4本の指でダーツを支えるグリップです。
4本の指で支えるため、グリップの安定感は抜群です。構えた時にダーツがぐらつく心配がほとんどありません。
その反面、指が多いためリリース時にいずれかの指が引っかかってしまい、ダーツの軌道がズレやすいというデメリットがあります。
ダーツをしっかり固定したい、力が弱い女性などにおすすめのグリップです。
投げ方(スローイングフォーム)
スタンスとグリップが決まったら、いよいよ投げる動作です。
ダーツのスローイングは、一連の流れるような動作で構成されています。ここでは4つのステップに分けて解説します。
- 構え(セットアップ)
- テイクバック
- リリース
- フォロースルー
① 構え(セットアップ)
スタンスを取り、グリップを固め、狙うターゲットに腕を上げた状態です。
これは単に狙いをつけるだけでなく、毎回同じ投げ方をするための「始動の合図」としての役割も持っています。
目線、肘の高さ、手首の角度などを一定に保つことで、その後の動作の再現性を高めます。
② テイクバック
構えた位置から、投げるために腕を後ろに引く動作です。
これは、力まずに腕をスムーズに振るための助走のようなものです。
テイクバックをしないと、腕の力だけで投げようとしてしまい、フォームが力んで不安定になります。
引く深さや速さは人それぞれですが、毎回同じ位置まで引くことを意識するのが安定への鍵です。
③ リリース
テイクバックした腕を前に振り出し、ダーツを放つ最も重要な瞬間です。
ダーツは「投げる」というより、「ターゲットに向かって腕を伸ばしながら押し出す」というイメージが近いです。
指がスムーズに離れる「指離れ」を意識し、手首や指に余計な力が入らないようにしましょう。リリースするタイミングが早すぎると上に、遅すぎると下に外れます。
④ フォロースルー
ダーツを放った後、腕が自然に伸びていく動作のことです。
ダーツが手から離れた後の動作なので無意味に思えるかもしれませんが、これは軌道を安定させるために不可欠な要素です。
投げた後すぐに腕を止めたり下ろしたりすると、リリース直前の軌道がブレてしまいます。
投げ終わった後も、指先までターゲットに向けたまま腕を伸ばし切ることで、ダーツはまっすぐ飛んでいきます。
まとめ
ダーツの投げ方は、これまで紹介した「スタンス」と「グリップ」だけでも9通りの組み合わせがあります。
さらに、テイクバックの深さや腕の振り方など、細かな要素を加えれば、その組み合わせはまさに無限大です。
上達への第一歩
① まずは基本の「ミドルスタンス」と「スリーフィンガーグリップ」から試してみましょう。
これが最も多くの人に合うとされる基本形です。
② 色々試して、自分にしっくりくる形を見つけましょう。
基本を試した上で、オープンスタンスが楽だったり、4本指の方が安定したりと、自分なりの発見があるはずです。
③ 決めたフォームを反復練習して体に染み込ませましょう。
毎回違う投げ方では上達しません。これ、と決めたら、まずはそのフォームで投げ続けることが大切です。
必ずあなたに合った投げ方が見つかります。
焦らず、じっくりと自分だけのフォームを作り上げていく過程もダーツの醍醐味です。さあ、ダーツを楽しみましょう!